アルベルト・カサス:「ミラー、クアルタラロ、バニャイアといったライダーのデザインを手掛けてきました。」


 VAVELより。今を時めくジャック・ミラーやファビオ・クアルタラロと仕事をした経験を持つ売れっ子デザイナーは、なんと彼らと同じティーンでした・・・。





 レース業界で活躍しているのはライダーやチーム関係者だけではない。彼らの陰で、もがきながらも夢を追っている者も少なからず存在する。今日は、いつもとは違う角度からモーターサイクル業界について語りたい。

 バルセロナ在住のアルベルト・カサスは、グラフィック・デザイナーを志す18歳で、これまで4年に渡りこの業界で活動してきた。そもそものきっかけは、友人でFIM CEV Repsol Moto2のライダーであるペドロ・ロドリゲスのデザインを引き受けたことであった。このデザインは2010年のアラゴン・グランプリのためのものであった。



 ハイ、アルベルト。まずお尋ねしたいのは、あなたのプロジェクトのベースについてです。

 わたしのプロジェクトは、わたし自身の二つの趣味が組み合わさったものです。つまり、デザインとモーターサイクルです。最初は友人同士の遊びだったのですが、今はより具体的になってきました。

 どのように始まったのでしょうか?

 もともとデザインに関心があって、絵を描くのも得意でした。わたしの友人でレースをしているペドロ・ロドリゲスが、ワイルド・カードとして世界選手権デビューをすることになって、その際にライダーIDの製作をお願いされたんです。

 ペドロ・ロドリゲスからの最初の依頼について、どのようにお考えですか?

 特別な出来事でした。デビュー・レースですから、彼にとっては凄く重要なイベントです。その日のためのものを、全く経験の無いわたしに依頼してくれたわけですから、とてもうれしかったですし、それと同時に気負いました。いつもジョークで言ってるんです。わたしがこの業界にいられるのは彼のおかげだと。

 最初のデザインは何を基にしたものなんですか?この業界について全く知らなかったんですよね?

 はい。最初のデザインに取り掛かる際、他のライダーのものを参考にしました。実際、こういったことは初めてでしたから。お手本を探しましたし、ペドロから提供してもらったものも参考にしました。

 ですけど、失敗でした。バイクのカラーとは不釣り合いでしたし、貼れる場所が物凄く小さかったんです(笑)

 そういういきさつで、もっとこの分野について学びたいと思ったんですか?CEVを通じて。

 全くその通りです。ペドロにはとても感謝しています。このような面白い世界を知るきっかけを与えてくれたんですから。その上、わたしのプロモーションもしてくれました。彼のおかげで知り合いが増えました。




 この業界に飛び込んだ彼は、多くのライダーのデザインを手掛けることになる。実践を通じて経験を積み、その存在を認知されるようになった。彼は有力ライダーからも依頼を受け取るようになった。ファンフラン・ゲバラ、ジャビ・ベルジュといった面々である。そして、2012年にはイサック・ビニャーレスと共に世界選手権への進出も果たした。

 そして、イサック・ビニャーレスと共に世界選手権に参入したんですよね!

 はい。何もかもがとんとん拍子でした。イサックがわたしのようなデザイナーを探していると聞き、その際に連絡先を貰ったんです。それからすぐに仕事が始まりました。

 結局はあまり上手く行かなかったんですよね?

 通年契約のはずでしたが、そうなりませんでした。シーズン前にそういう契約を交わしたはずなのに。



 歩みを進める

 このような些細なトラブルに見舞われたものの、それに捕らわれることなく、彼は夢に向かって突き進んだ。その年の夏には新たな仕事が舞い込んできた。Moto2世界選手権の現役ライダー、マルセル・シュロッターが、新しいロゴの作製を依頼してきたのだ。

 また、2012年にはフランシスコ・バニャイアとの関係もスタートした。現在、彼は有望なイタリア人ライダーの一人と目されている。その当時、バニャイアはエミリオ・アルサモラのチームからCEVに参戦していた。二人が出会ったことで、愉快なデザイン” Pecco's Fattoria”が誕生した。

 その年の夏には更なる進展がありました。

 はい。その年の夏にマルセル・シュロッターから連絡を受け取りました。デザインを提供してくれないかと。シーズン中盤から参戦カテゴリーが変わるためでした。

 マルセル・シュロッターからメッセージを受け取った際どう感じましたか?

 大変うれしかったです。どういったいきさつで、彼らがわたしのことを知ったのかは解かりませんが、とてもうれしかったです。こういったことがあるというのは、仕事が軌道に乗っていることの表れですから。

 わずか16歳にして、世界的に活躍するライダーたちのデザイナーになりました。このような短期間で、また若くして大きな変化に遭遇し、眩暈のようなものは感じなかったでしょうか?

 その表現が適切かどうかはわかりませんが、物事がうまく運んでいると認識していました。

 それから、ペッコ・バニャイアも顧客に加わりました。きっかけは何だったんですか?

 はい。その年の夏のことでした。モンメロでのCEVの際に、友人の一人がわたしたちを引き合わせてくれました。すぐに仲良くなって、わたしがこういうことをやっていると彼に伝えたところ、彼の方からマスコットを作ってくれないかと言われました。有難いことに、ペッコはロレンツォ・バルダッサーリも紹介してくれました。昨年のモンメロでは彼にもスペシャル・デザインを提供しました。

 このデザインにはペッコも関わったんですか?

 最初はそうではありませんでした。しかし、CEVでのラスト・レースの際にアプローチがありました。二つのキャラクターを入れたマスコットにしてほしいと。そのうちの一つが彼のキャラクターで、もう一つはわたしのキャラクターということでした。そして、Pecco's Fattoriaとタイトルを入れました。

 それからデザインを少し変えました。彼は世界選手権のデビュー・イヤーを、このデザインをつけたモーターサイクルで走りました。



 グレート・シーズン

 2013シーズンには嬉しい出来事がたくさんあった。ライダーからの依頼が増え、シュロッター、バニャイア、ゲバラとの契約も更新された。またバニャイアとゲバラは世界選手権進出を果たした。さらにはジャック・ミラーからの依頼も受け取った。ミラーはカサスに対し、IDのデザインを依頼した。

 しかし、いいニュースはそれだけにとどまらなかった。2013年はまさしく彼の年だった。アルベルトはファビオ・クアルタラロと契約したのである。その後、彼は2013年のCEVチャンピオンとなった。それに伴い重要な契約も成立した。あるマーチャンダイジング・カンパニーが彼らのロゴの使用許諾を得たいと申請してきたのである。更にはMoto3チームとも契約を結んだ。メイン・スポンサーの交代に伴い、同チームはイメージを一新することを希望していた。

 2013年はマジカル・イヤーでしたね。

 もちろんです。素晴らしい年でした。依頼が増えましたし、進展もありました。

 既存の顧客に加え、新たなパートナーもできました。世界選手権の有力ライダーがあなたに関心を向けてくれた際、どう感じましたか?

 はい。ライダーたちは昨年に引き続き、わたしのデザインを使用してくれました。しかしル・マンからは、ジャック・ミラーがわたしの手掛けたIDをつけて出走するようになりました。この申し出を受け取った時は本当に嬉しかったです。真剣な話だというのが判りましたから。わたしたちはモンメロで打ち合わせを行ったのですが、その際に彼がわたしのことを高く買ってくれていることが判りました。

 周囲の反応はいかがですか?

 実際、特に家族は驚いています。この歳で仕事をすることになり、その成果が全世界に向けて発信されることになったんですから。友人からはいつもデザインをお願いされてきました。

 デザインを依頼された際には、通常何から着想を得るのでしょうか?

 まずは、有名ライダーが使用しているデザインの中で好きなものがあるかどうかを依頼者に尋ねます。これをベースに依頼者の個性を盛り込んで、最初の試作品を作製します。それから先方にこれを見てもらって、意見やアイデアを訊きます。もし気に入ってもらえれば、ディデールを詰めて完成させます。

 ファビオとの提携のきっかけは?

 彼とはアルバテセのCEVで出会いました。彼に仕事させてほしいと持ちかけ、次のレースにはわたしの作製したマスコットを持ち込みました。また、彼と仲良くなりました。わたしはファビオが勝つと信じていました。かなり見込みの薄い事だとは解かっていましたが。ですから、それが現実になった時には喜びもひとしおでした。

 他にも大きな出来事が二つありました。マーチャンダイズ・カンパニーと契約を交わし、チームのデザインも請け負うことになりました。

 はい。仕事が軌道に乗っていると認識できる出来事が二つありました。一つは企業からマーチャンダイズ・コラボレーションについての申し出を受け取ったことです。夢のような話でした。わたしの作品が製品化されるわけですから。

 チームに関しては、新しいグラフィック・イメージの製作を依頼されました。スポンサーの変更に伴うものでした。結局は採用されなかったんですが、そういうこともあります。顧客が判断することですから。



 活動自粛

 2014年になり、アルベルトは自らの活動にブレーキをかけた。カレッジ入学に伴い、活動を制限することにしたのである。彼は一部のライダーへのデザインの提供を辞めたものの、世界選手権に参戦中のジュール・ダニーロやCEVライダーからの仕事は、依然として請け負っている。

 今シーズンについてはシフト・ダウンなさいましたが、余裕ができましたか?

 はい。今シーズンは多くの仕事を引き受けないことにしました。グラフィック・デザインを専門とするカレッジの一年目ですから。ライダーに向けたデザインに従事する時間を削って、その分を勉強に充てることにしました。

 世界選手権にはダニーロがいますが、CEVでは誰を手掛けているんですか?

 今年のCEVでは、Moto3のファビオとシャビ・カルデルス、またMoto2のスティーブン・オデンダールを担当しています。CEVに加えて、ワールド・ルーパーバイクの世界でもわたしのデザインを見ることができます。スーパースポーツのフレーザー・ロジャース、スパーストック600のマイケル・リナルディ、ヨーロピアン・ジュニア・カップのWeng Jian Zhuがわたしのデザインを使用しています。ドイツ選手権にはLukas TrautmannLenno Huthmahcerがいます。

 CEVでは先にお話しした以外のライダーも手掛けていて、これからデザインに着手するところです。

 これまで手を組んできたライダーたちとは良好な関係を維持していますか?

 殆どについてそうだと言えます。事実、この仕事を通じてライダーたちとの友情を育んできましたし、それこそがこのアドベンチャーの素晴らしいところだと思っています。依頼者のことを個人的に知っていた方がやりがいを感じますし、作品の出来も良くなると思っています。

 率直にお聞きします。ご自身に高いポテンシャルがあるとお考えですか?

 はい。自負はあります。しかし、容易なことであるとも思いません。ですから、それが発揮できるように仕事にも勉強にも一生懸命取り組まなければなりません。

 この業界に尊敬するデザイナーはいますか?

 はい。アルド・ドゥルディの仕事に対する姿勢は素晴らしいですし。Starlineのデザイナーたちの仕事にも感服しています。特に後者については、ものすごく複雑というわけではないのに、それでいて印象的です。

 あなたのようになりたい人がたくさんいるでしょう。有名ライダーを手掛けることを夢見る人たちが。彼らに向けて何かアドバイスはありますか?

 あらゆるチャンスを利用すること、そして何よりも忍耐を身につけることです。好機が巡ってこない時期もあるでしょうが、正しいことを続けていれば、そのうちに訪れます。




 リンク先には彼の手がけた作品の数々が掲載されて・・・いると思うんですがなぜか表示されません。とりあえず、Pecco's Fattoriaはこんな感じ。



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